私はコインランドリーの販売営業会社で3年間働いていました。コインランドリーといえば都市部であれば数坪の小さな店舗で経営、田舎であればコンビニの射抜き物件などを利用して広い土地に駐車場とセットで経営しております。コインランドリーの多くは、個人事業主や中小企業が運営しており、その中間に入るのがコインランドリーの営業販売会社となります。
ではそんなコインランドリービジネスは儲かるのか?
今回は、そんなコインランドリービジネスについてご紹介していこうと思います。販売会社の利益のからくりについて、またその闇についても解説をしておりますので是非ご参考にご覧ください。
コインランドリービジネスについて
コインランドリー販売業者は大きく2つのものやサービスを販売して利益を出します。一つはコインランドリーの機械、そしてもう一つは工事です。お客さんの予算や、出店する店舗の規模によって金額は大きく変わりますが、大体一店舗につきお客さんが出す金額は、500万円〜3000万円の範囲になることがほとんどです。機械をリース(借りる)する場合はさらに継続して毎月数万円が掛かります。
肝心の営業会社の利益ですが、競合がいた場合は1割前後、競合がいない場合は3割前後といった感じです。そしてほとんどの場合は競合がいる状態でお客さんと話を進めていきます。機械代と工事代だけではただの価格競争になってしまい、安い方にお客さんは流れ、買ってもらった方も大して儲けられないということになります。
そこで各社コインランドリー運営のノウハウを別料金で見積もりをして提供するのです。そのノウハウをよく見せるために、カラフルな表やグラフ、出店場所を詳細に調査した提案書と、無駄に豪華な表紙に挟まれた見積書を用意します。ノウハウ代は売り切りのものもあれば、年間契約のものもあります。
最終的にはこのノウハウ代も競合対策の値下げに使われたりすることもあるのですが、このノウハウのプレゼンがうまくいけば、競合よりも高い値段でも販売することができます。一番大切なのはお客さんの開業資金を抑えることではなく、開業した後にどれだけ儲けることができるのか。お客さんにどれだけ設けられるイメージを持たせられるかが勝負なのです。
とは言っても、一店舗の利益は数万円〜数十万円と大きく儲けることはでいないので、大企業が参入してくることはありません。しかし個人事業主や中小企業は事業として取り組むのです。その個人事業主や中小企業の事業意欲をターゲットにした産業はいくつもありますが、その一つがコインランドリー販売業界ということです。
コインランドリービジネスは儲からない
しかしこのコインランドリーのノウハウは会社によって多少に違いこそあれど、あまり機能していません。なぜならコインランドリーの販売会社はコインランドリーを運営していないことが多いからです。中には運営している場合もありますが、立地勝負のコインランドリーはノウハウよりも出店場所に売り上げが左右されます。
それでもコインランドリーの販売会社の営業は、コインランドリーを売るのが仕事。多少立地が悪くても、自社のノウハウをウキに売れるのであれば売ってしまいます。
その結果、ピッカピカの新しいコインランドリーができるものの、すぐに閑古鳥が鳴きます。工事をして機械を設置し、リースの支払いが毎月ある客さんは、赤字だからといって事業を止めることもできません。コインランドリーは一度出店したら場所を変えることができません。これぞまさに生き地獄。コインランドリー事業が走り出したら後戻りはできません。
コインランドリー業界で働いてわかったこと
販売を担当した営業マンは儲かる可能性が低い場所でもコインランドリーを販売するということを繰り返し、販売後しばらくすると顔を出さなくなります。そして驚くべきことは、このような状態を会社が黙認しているどころか助長しているということです。
しかし社内でも表立って「多少儲からなくても売ってこい」というような指示は出ません。上司から部下には「ここはいい場所だ。コインランドリー営業経験豊富な俺がいうんだから間違いない。さあ売ってこい」と指示が出ます。
それを信じた部下はコインランドリーを販売し、その後事業がうまくいかなくなって人生が狂っていくお客さんを目の当たりにします。お客さんには機械と工事代、リース代が残っているのですから、その年数は支払いがある事実を担当営業マンは知っています。
この段階でほとんどの営業マンは辞めていきますが、一定数は残ります。無理な販売を繰り返している営業マンは、お客さんの事情に対して特に何に感じないような人、ではありません。普通のいい人です。しかし、会社や上司の命令には逆らえない人。会社や上司に言われたからやっている人たちが無理な販売を繰り返しています。
会社もそのことを理解しているのでしょう。あまり一つの土地にいすぎると恨みを買ったり、心が弱っていくかもしれないので、1年〜2年の短いサイクルで転勤があります。それも転勤前とは全く地域が違う遠い土地です。すると不思議なもので、心機一転、多少病んでいた人でも新しくコインランドリーを販売し始めるのです。
コインランドリービジネスはこれからも残り続ける
コインランドリーの販売会社はいわば顧客を騙しながら販売を続けています。しかし無くなることはありません。なぜなら新しい顧客をどんどん開拓しているからです。個人事業主が多い業界を見つけてはダイレクトメールを送付し、営業をかけます。
個人事業主が多くコインランドリーに興味を持ちやすい業界とは、コンビニや酒屋、タバコ屋などが代表的なものです。他にもそのような業界が見つかると、いち早くダイレクトメールを送りつけたり、その業界の展示会に出店したりして、新しい顧客を次々と見つけていきます。前の顧客は切り捨てて、次々と新しい顧客を見つけて売り逃げを繰り返す。このような状態が現在も続いています。
まとめ
私はコインランドリーの販売会社に入社して3年間営業として働き「このままでは人を騙してしまう」と感じて転職をしました。私自身は結局コインランドリーを販売することはありませんでしたが、上司の手足となって働いたことは事実です。
会社を辞めて外から見ると見えてくることもたくさんあります。ちょっとネット検索するとわかることでも、会社にいるときには知らないこともありました。例えば、会社が集団訴訟を起こされていることです。
売り上げが上がる見込みのない場所でコインランドリーを開業した事業むしが集団で会社を訴えていたのです。事業主の気持ちはわかります。しかし、コインランドリーの販売会社が、「この場所なら儲かると思った」と言えばそれまで。根拠なんていくらでも作ることができます。
そんな会社に引っかからないために必要なのは、自分の頭で考えること。このような会社はコインランドリーに限らず、さまざまな形で存在します。その会社は詐欺集団ではなく、普通の合法的な会社として存在します。皆さんもどんな形であれこのような会社には関わらないように注意しましょう。