マンションにお住いの方はおわかりでしょうが、毎月マンション管理費、修繕積立金、駐車場・水道代などが徴収されていると思います。これらのお金はマンションの資産価値を維持しながら、日々快適な生活を送るため、管理組合の運営資金に充当されます。
ですが管理組合は当然素人集団なので、マンション管理会社に業務委託されているケースがほとんどです。
現状の委託費が適切なのかどうか、住民にはなかなか理解できないところと思います。そこで今回は、マンション管理会社や管理組合がどのように運営されているのか、どのように儲けを出しているのか詳しく解説していきたいと思います。
皆さん気を付けてください、という意味ではなく「こういう儲けのからくりがあるんだ!」ということをご認識いただきながら快適なマンションライフをお過ごしいただきたいという思いで解説させていただきたいと思っています。
マンション管理組合と請負会社について
マンション管理会社は、マンション管理の素人集団である住民に成り代わり、マンションの資産維持や住民の快適な生活を保障するため、マンション管理組合からの委託を受けてさまざまな業務にあたるものです。
住民の窓口になるのはほぼ常駐する管理人であったり清掃員ということになりなす。ただ彼らは単なる窓口であり、会社内に出来事に対応するフロントマネージャーが控えます。
管理組合の会合や総会ではこのフロントマネージャーが中心となります。この業務には管理業務主任者という国家資格が必要となります。そのバックには、建築、法務、設備などの専門家が控え、その下にはさまざまな専門業者がいつでも動けるような体制をとっています。
特に最近では、地震・台風などの自然災害が激甚化しており、いかに専門性のあるスタッフを社内外に抱えているかがマンション管理業界の強み・弱みを決定することが多いように感じます。
マンション管理会社を分類すると、やはり多いのはデベロッパーや建設会社系列の会社、最近になって業界参入してきている電力・ガスなどのインフラ系列、中には商社系列なども存在します。また、どこの系列でもない独立系と呼ばれる、マンション管理の業態企業も多くあります。
管理費や修繕積立金に隠された儲けの仕組み
マンションの住民は、居住スペースや土地の分割所有割合に応じて、マンション管理費や大規模修繕工事に備えるための修繕積立金を管理組合に支払います。駐車場をお使いの方は駐車場料金、水道に関しては供給方式によって異なりますが管理組合に支払うケースがあります。
こういう費用が管理組合の活動原資になりますが、管理組合の費用費目の中に管理委託費があり、これが管理受託会社の収入となります。
理事会か総会の際に管理受託会社が「重要事項説明」を行いますが、ほとんどの住民さんは意味不明のような顔か眠くて堪らん風情の顔で聞かれています。しかし実はこれが重要で、管理会社との契約約款となります。しっかりとお聞きになるべきと思います。
典型的には、事務管理費、管理人・清掃員業務費、建物・設備管理業務費、監視業務費などに分類されています。中でも建物・設備管理業務費が分かりにくいおもいますが、少し踏み込みますが、消防設備、設備巡回、受水槽清掃、駐車場点検、ピット清掃、雑排水菅清掃、植栽管理、空調機器管理などに細分化されます。
これらの積み上げが委託管理費総額となるわけです。この細目を正確に査定できる住民さんはほとんどおられません。それを良いことに、とは申しませんが、あきらかに積み増しが見受けられます。まずはこれがマンション管理業界の「儲けのからくり」の一つです。
よくみると明らかにおかしい項目があるのですが、なんとなく流されがちな議案ですし、誰かに指摘されても管理会社は慣れたもので、素人である住民を煙に巻くくらい簡単なことです。
マンションの維持管理費に隠された儲けの仕組み
マンションも時間経過とともにさまざまな不具合が起きてきます。配管の経年劣化による漏水事故、機械式駐車場の故障、鉄部の錆、病気による植栽の枯れ、列挙するときりがありません。なにが起きるかわからない中で、何が起きても対処できる人間などどこにもいません。
もちろん管理会社内にもいるはずもありません。というか管理会社というだけで、住民がこの人は専門家であると信じるのは大間違いで専門家の対応を期待します。「餅は餅屋」です。結果、管理受託会社の実力は、さまざまな分野の専門家・会社とのネットワークの有無次第となります。あんなことが起きたのに翌日には専門業者を手配してくれ修理できた。素晴らしい管理会社だ。となります。
この管理会社と専門業者との関係性の中に「儲けのからくり」が存在します。
管理会社は事象ごとに業者を選択するのではなく、ほとんどの場合は固定させています。水回りなら〇〇会社、植栽なら△△会社という感じです。結果として、この管理会社はいつもうちに仕事を出してくれる。感謝、感謝です。管理会社としてはその見返りとしてさまざまな形でキックバックを求めます。
各社言い方は違いますが「業務サポート料」とか「発注管理費」とか読んでいます。問題が大きいのはこの先で、業者も幾分かのマージンが発生することを熟知していますので、管理会社への見積りにその分を追加して提出します。管理会社もそれを黙認します。
それに更に管理会社は「調整費」や「管理費」の名目で利益をのせます。原価額100×マージン分10%✕管理会社利益10%=120%。という感じでしょうか。本当の作業費に管理組合が全く知らないうちに20%乗せた請求書に理事長が捺印することになります。
ここまで解説してきたことはどのような業界でも多かれ少なかれ、あるある話だと思います。私も何十年とサラリーマンをやってきましたので、そこまで嫌悪感を持つほどの話ではありません。またこの事はある意味業界では当たり前になっています。建築後時間が経ち、劣化が進んだマンションは管理会社にとっては垂涎といえるでしょう。
またこの立ち居振る舞いが自然にできる者が優秀な社員ということになっています。というのも、現在はマンションが林立し管理会社が枯渇している状態、すなわち極端な「売り手市場」になっているようです。酷い場合は管理会社が薄利物件から撤退したいというくらいらしく、特に築浅で小型物件のうまみが少なく、住民は新しいマンションなので一生懸命なのに、撤退の標的になるという皮肉な状況になっているようです。
まとめ
マンション管理業界と向き合うにはこれからどうすれば良いのか。対処方法になるのかどうかわかりませんが3点ほど指摘したいと思います。
まず先ほども申し上げましたが、これはどの業界でも考えられることだと思います。管理組合は、マンション管理業界のやり方を前提に考えるべきでしょう。どのマンションにも建築、設備、植栽などの専門家とは言わずともそれに近い方はおられると思います。
管理組合とは別に早い段階で「技術委員会」とか「設備委員会」とか管理組合に準じる組織を立ち上げて、管理組合は何かあるたびに委員会に諮問するような仕組みを構築すべきだと思います。マンション管理会社側に目の効いた対応ができるようになります。もちろんこの委員会は管理規約の中で明確に位置付けることが必要です。
次に、マンション管理業界、マンション管理会社と言いますが、所詮は人間の集まりです。自分のマンションを担当するフロントマネージャーをよく吟味し、マンション管理会社と徹底的に議論し、人間味溢れる方を担当にあててもらう努力をすべきだと考えます。
最後が一番重要なことですが、何のためにマンション管理をするのかを本当に理解しているマンション管理会社を選定すべきです。基本はマンションの資産価値の維持・向上と住民の快適な生活環境をいかに担保するかです。フロントマネージャーが自社の利益を考えるのは大いに結構ですが、誠実にこの基本原則を具現化できる会社に委託すべきでしょう。
昨今、これを忘れているマンション管理会社が多いような気がします。私見ですが、冒頭申し上げましたデベロッパーや建設会社系列の会社、新規業界参入してきている電力・ガスなどのインフラ系列はお勧めです。反対に独立系と呼ばれるマンション管理には、決算に連結がないので利益優先する会社が多いような気がします。