人材派遣業というのは、ブラックに近いグレーな方法で利益を確保しています。そうなってしまう理由は多くあるのですが、中でも「派遣会社に派遣先企業が捻出できる料金が安すぎる」という点が一番の問題点となっています。
ただ近年の派遣社員時給を見てみると、2000年代とは比べ物にならないほど変わってきており、出勤日数や残業次第ではありますが、正規職員よりも賃金が稼げるような状況となっております。
では、そんな状況でも派遣会社は儲かっているのでしょうか?人材派遣会社は本当に「ピンハネ」を行っているのでしょうか?
今回は、人材派遣会社がどのように利益を出しているのか、派遣業界の裏話を交えつつご紹介したいと思います。それでは、さっそく見て行きましょう。
人材派遣会社の仕組み
※画像引用元はコチラ(厚生労働省)
まず、本来雇用は労働者と雇用元の2者で成り立っていますが、この人材派遣というのは、労働者、雇用元、派遣先という3者間で成り立っています。
労働者は雇用元の派遣会社に雇用され、派遣会社は派遣先企業(勤務先)に労働者を派遣する。派遣先企業は派遣会社へ賃金を支払い、手数料を引いた額を労働者へ支払います。労働者は仕事にあぶれることがなく、派遣会社は雇用するリスクを背負うが手数料が得られる。そして派遣先企業は労働力を継続的に確保できる。という構図になります。
派遣先企業のメリットとしては、自社で雇用してしまうリスクを回避できるという点です。例えば、業績が悪くなってしまった場合の休業補償、会社が倒産してしまった場合の手当等、社会保険などの様々な福利厚生。このような雇用リスクを回避し、雇用を維持するためにできた新たな働き方が人材派遣という働き方なのです。ちなみに、人材派遣業に興味がある場合は、コチラの記事⇒【人材派遣業の始め方と必要な資格について】で詳しく人材派遣会社の作り方についてご説明致しております。よろしければ是非参考にどうぞ。
人材派遣会社の儲かる仕組みとマージン率
では、ここからは利益の出し方について触れていきます。人材派遣業界の利益の出し方は大きく3通りあります。
一つ目は、単純に派遣先に料金を多く請求するという方法です。派遣元(派遣会社)は派遣先に労働者を派遣しますが、労働者に支払う賃金はその派遣先からもらえる金額によって決まります。
つまり、単純に派遣先に料金を多く請求できれば、労働者への賃金を算出しても派遣会社は利益が得られます。
そのため、派遣先企業から料金を多くもらえる場合は、派遣労働者の時給は高く設定できるのですが、料金をもらえない場合は、派遣労働者の時給は安く設定せざるを得ないという事です。
二つ目に、派遣料金を高くもらっていても、派遣労働者の時給を低く抑える事によって利益を出すという方法があります。派遣会社はマージン率(派遣料金と労働者時給を比べ、その中の何%を会社の利益とするか)を設定しています。
一般的なマージン率の目安は、保険料を含まない場合、20%~32%くらいまでといわれています。(派遣料金を2000円もらい、8時間勤務の派遣先であれば、利益は1日3200円~5120円です)その中から保険料や福利厚生部分を引いていくので、大体の派遣会社は営業利益として3%~10%未満の厳しい利益状況で運営しているところが多いです。
中には、マージン率を高く設定し、利益を確保するという方法をとっている企業もたくさんあります。派遣労働者としては、許せない話ですが、これは別に違法という事もありません。(マージン率に関しては開示する義務があります:法第23条第5項)
三つ目は違法な分類になってくるのですが、保険加入をしない、させないという事で利益を得ている方法というのがあります。その中でも多いが、週4日~5日くらい勤務しているのに、保険に加入していないというケース。
皆さんが聞いたことのある、雇用保険、社会保険というものがあると思いますが、基本的に週の所定労働時間によって加入する保険が異なります。※社会保険に関しては、所得によって金額が変わるので、インターネットで社会保険料率などのキーワードを入れると調べる事ができるので、調べてもらうといいのですが、
大体一般的に労働者の賃金が20万円程度であれば、企業が負担する保険料はおおよそ28,000円~30,000円くらいです。
派遣社員一人が1カ月20日勤務程度した場合の利益が5万円前後(会社により異なります)しか利益が出ない事を考えると、保険料が浮くだけで相当利益をプラスにできます。その為、保険を加入しない、させないという事が頻繁に起きているのです。
人材派遣のピンハネ率は本当にずるいのか
上記のような方法で利益を出している企業は正直多いです。ただ、利益とされている金額から保険料などがかかることはお伝えしましたが、それとは別に派遣会社は人材を募る際には広告を出す必要があります。
最近は労働人口の減少で人材も集まりにくくなっているため、広告費をかけてもなかなか集まらないというのが現状です。確かに、こここまで見ると派遣会社の貪欲さが見えてきますが、人材派遣会社もボランティアではないという事を理解しておいた方がいいでしょう。
今後の人材派遣業界
※画像引用元はコチラ
そんな人材派遣業界ですが、近年、立場が非常に弱い状況となっています。派遣先企業としては、自社で採用する事のリスクを考えると派遣を使用したいが、派遣に対する数々の法改正によって、現状派遣を使用する料金が高くなっています。
そのため、派遣先企業は派遣に手を出しにくくなっている現状があり、雇用も促進されず、派遣契約が終了するような事態が横行しています。
派遣料金が高いので使用したくないという派遣先企業があると派遣会社は派遣をして利益を回収する事ができません。そのため、利益を大幅に削り、数を多く取る、いわゆる薄利多売のような形にするか、違法なところに行くかというような選択をせざるを得ないような状況になっているのです。
まとめ
派遣会社の利益の出し方に関しては、いろいろありますが、中には法律に抵触するような方法をとっている企業もあります。ただ、派遣会社も努力している企業は多く、マージンが高いからと言って全てが利益として計上しているわけではないという事です。
働いてわかったことですが、派遣会社は利益を結構もっていっているというイメージがすごく強かったのですが、思いのほか利益は残らないんだなと感じました。社員の賃金を利益に回しているというイメージが強かったのを覚えています。
中には違法な手段で利益を稼いでいる派遣会社もありますが、そのような企業ばかりではないですし、いろいろ苦悩しながら運営している会社が多いのも事実です。ただ、年々法律は厳しくなっていくので、今後伸びる事業ではない事は明白です。
正しい人材派遣会社の選び方・対処方法
労働者としては、しっかりと法律をまもっている、福利厚生が整っているような企業で勤務する事が重要になってきます。
固定勤務で週5日、給与は月払いなのにも関わらず、社会保険の加入がないなどの説明を受けた段階でその派遣会社はやめておいた方がいいでしょう。社会保険だけでなく、雇用保険すらも加入はしませんという派遣会社があればその会社での登録は絶対にやめておいた方がいいでしょう。
ただ、昨今の派遣社員時給を見てみると、2000年代などとは比べ物にならないほど変わってきており、出勤日数や残業次第では正規職員よりも賃金が稼げるような状況になってきました。
正社員と代わりないような内容の派遣会社というのは大手企業の中でも一部の企業しかありません。派遣を利用する際は、しっかりと内容の確認をし、保険関係や福利厚生を重視しているような企業で勤務した方が労働者としては良いと思います。