不動産会社を創設するというのは、不動産業界に興味がある人や、自分のビジネスを始めたい人にとって魅力的な選択肢かもしれません。しかし、不動産会社を創設するには、ただ資金や物件を用意するだけでは不十分です。
不動産会社は宅地建物取引業の一種なので、宅地建物取引業に関するさまざまな法律や規制に従わなければなりません。そのため、不動産会社を創設する前には、必要な許可や免許を取得することが重要です。
そこで今回は、具体的にどのような許可や免許が必要なのか、不動産会社を創設する為に必要な許可や免許をまとめてご紹介します。それでは、さっそく見て行きましょう。
不動産会社を作るメリットとは
不動産会社を創設するということは、不動産市場に参入し、土地や建物の売買・仲介・管理・開発などの事業を行うことができるようになるということです。不動産会社には様々なメリットがありますが、同時に難しさも多くあります。まずは、不動産会社の創設におけるメリットについて解説します。
まず、不動産市場は安定性が高く、需要も大きいという点がメリットです。不動産は人々の生活に欠かせないものであり、住宅やオフィス、商業施設などの需要は常にあります。また、不動産市場は景気や金利などの影響を受けにくく、長期的に見ても価格や取引量は上昇傾向にあります。このように、不動産市場は安定したビジネスチャンスを提供してくれると言えます。
次に、不動産は資産価値が高く、収益性も高いという点がメリットです。不動産は有形資産であり、時間や場所によって価値が変わりません。また、不動産は売却するだけでなく、賃貸や貸付などで収入を得ることもできます。さらに、不動産は借入金利や減価償却費などの経費を差し引いても利益率が高いことが多く、キャッシュフローを生み出しやすいです。このように、不動産は資産価値が高く、収益性も高いと言えます。
また、不動産は多様な事業展開が可能で、競争力を高めることができるという点がメリットです。不動産会社は売買・仲介・管理・開発などの事業を行うことができますが、これらの事業は相互に関連しており、シナジー効果を生むことができます。例えば、売買仲介事業では自社物件や他社物件を紹介することができますが、自社物件の場合は仲介手数料だけでなく売却益も得ることができます。
また、管理事業では自社物件や他社物件を管理することができますが、自社物件の場合は管理報酬だけでなく家賃収入も得ることができます。さらに、開発事業では自社物件や他社物件を開発することができますが、自社物件の場合は開発費だけでなく販売益も得ることができます。このように、不動産会社は多様な事業展開が可能で、競争力を高めることができると言えます。
さらに、不動産は税制優遇や補助金などの支援制度が充実しているという点がメリットです。不動産は国や地方自治体の政策によって税制優遇や補助金などの支援制度が設けられており、不動産会社はこれらの制度を利用することで経営を助けることができます。例えば、不動産の取得や改修にかかる費用に対して減価償却費を経費として計上することで所得税や法人税を節税することができます。
また、不動産の取得や改修にかかる費用に対して補助金や助成金を受けることで資金調達を容易にすることができます。さらに、不動産の取得や改修にかかる費用に対して低利の融資や保証を受けることで資金繰りを改善することができます。このように、不動産は税制優遇や補助金などの支援制度が充実していると言えます。
不動産会社を創設するのは難しい
不動産会社の創設には以上のようなメリットがありますが、同時に難しさも多くあります。まず、不動産業界は競争が激しく、参入障壁も高いという点が難しさです。不動産市場は安定性が高く、需要も大きいですが、それだけに参入する事業者も多くなります。特に仲介事業では小資本で始められるため、全国に約12万社もの宅建業者が存在します。 このように、不動産業界は競争が激しく、市場シェアを獲得することは容易ではありません。
また、不動産業界は参入障壁も高いです。不動産業を営むためには宅地建物取引業免許を取得する必要がありますが、この免許を取得するためには宅地建物取引士の資格を持つ者を設置したり、営業保証金を供託したりする必要があります。さらに、不動産業界では土地や建物の情報やネットワークが重要ですが、これらを獲得するためには時間やコストがかかります。このように、不動産業界は競争が激しく、参入障壁も高いと言えます。
また不動産業界は法規制や業界ルールが厳しく、遵守する必要があるという点が難しさです。不動産業界は土地や建物という重要な資産に関わる業界であり、国や地方自治体の法律や条例によってさまざまな規制がかけられています。
例えば、不動産の売買や仲介には宅地建物取引業法や消費者契約法などの適用があります。また、不動産の管理や開発には建築基準法や都市計画法などの適用があります。さらに、不動産業界では業界団体や組合などの自主的なルールも存在します。例えば、不動産の価格や手数料には不動産鑑定士会や日本不動産協会などのガイドラインがあります。このように、不動産業界は法規制や業界ルールが厳しく、遵守する必要があるのです。
不動産会社を創設するためには、不動産市場や業界の特徴を理解し、事業計画を立てて、資金調達や免許取得などの準備を行う必要があります。不動産会社を創設することは簡単ではありませんが、ただ、挑戦する価値は十分にあると言えます。それでは、以下から不動産会社創設に向けてしっかりとした準備を行いましょう。
不動産会社創設に必要な申請と免許
不動産会社を創業するには、さまざまな許可や免許を取得する必要があります。ここからは、具体的に不動産会社の創業に必要な許可と免許について解説します。まず、不動産会社の創業に必要な許可と免許は以下のようなものがあります。
・宅地建物取引業免許
・法人登記
・消費税登録
・その他の届出や申請
それぞれの許可や免許について、詳しく見ていきましょう。
宅地建物取引業免許
宅地建物取引業免許とは、宅地建物取引業法に基づいて、国土交通大臣または都道府県知事から交付される免許です。 不動産会社は、この免許を取得しなければ、不動産の売買や仲介などの事業を行うことができません。この免許を取得するためには、以下の条件を満たす必要があります。
・欠格事由に該当しないこと(破産者や詐欺罪などの有罪判決を受けた者など)
・事務所を持つこと(自宅でも可だが一定の条件を満たす必要がある)
・宅地建物取引士を配置すること(5人に1人以上の割合で専任で所属させる)
・営業保証金を供託すること(本店1000万円、支店500万円)または不動産保証協会に加入すること
宅地建物取引業免許の申請場所は、以下のようになります。
・事務所が1つの場合は、所在地の都道府県知事に申請する
・事務所が複数ある場合は、国土交通大臣に申請する
申請書類は、各都道府県や国土交通省のホームページからダウンロードできます。申請書類には、事業計画書や資金繰り表なども添付する。ちなみに申請手数料は3万3000円になります。宅地建物取引業免許の取得方法は、以下のような流れになります。
1.申請書類を提出した後、審査が行われる
2.審査では、欠格事由や事務所調査などが行われる
3.審査に通ったら、免許通知のはがきが届く
4.免許通知のはがきを持って、最寄りの供託所(法務局や地方法務局)で営業保証金を供託するか、不動産保証協会に加入する
5.供託書または加入書の写しを都道府県知事に届け出る
6.免許証が交付される
ちなみに、不動産会社の事務所は、宅建業法で定められた条件を満たす必要があります。レンタルオフィスやコワーキングスペースでは開業できません。事務所は集客や信頼性にも影響しますので、扱う物件やエリアに合わせて適切な場所を選びましょう。
法人登記
法人登記とは、会社を設立する際に、法務局に登記することです。 法人登記をすることで、会社は法人としての権利や義務を持つことができます。 法人登記をするためには、以下の条件を満たす必要があります。
・商号を決めること(一定の制限がある)
・目的を定めること(不動産業を営む旨を明記する)
・資本金を決めること(最低でも1円以上)
・役員を決めること(最低でも1人の取締役が必要)
法人登記の申請方法は、以下のような流れになります。ちなみに、法人登記の申請場所は、本店所在地の管轄法務局になります。
1.会社設立のための定款を作成する
2.定款認証のために、公証役場に定款認証申請書と定款原本を提出する
3.定款認証手数料は3万円
4.定款認証後、株主総会を開催し、役員や監査役などを選任する
5.役員や監査役などが就任届や同意書などを作成する
6.法人登記申請書や添付書類を作成する
7.法人登記申請書や添付書類を法務局に提出する(手数料は6万円)
不動産会社を開業する場合は、個人事業主ではなく法人として開業することをおすすめします。法人として開業することで、信用度や責任の範囲が異なります。また、資本金は1000万円以下に設定すると税制面で有利になります。
消費税登録事業者
消費税登録とは、消費税法に基づいて、税務署に登録することです。 消費税登録をすることで、会社は消費税の納付や還付などの手続きができるようになります。消費税登録をするためには、以下の条件を満たす必要があります。
・前年度または当年度の売上高が5000万円以上であること(一定の例外がある)
・事業開始日から15日以内に申告すること
消費税登録の申請方法は、以下のようになります。ちなみに消費税登録の申請場所は、本店所在地の管轄税務署になります。
1.事業開始等申告書(青色)または事業開始等申告書(白色)を作成する
2.事業開始等申告書(青色)または事業開始等申告書(白色)を税務署に提出する
その他の届出や申請
法人登記や免許証が交付されたら、事業を開始できるというわけではありません。まだ、以下のような届出や申請を行う必要があります。
・社会保険や労働保険の加入届
・雇用保険の事業所設置届
・健康保険や厚生年金保険の事業所番号通知書
・源泉徴収票の発行
・青色申告承認申請書
・個人情報保護法に基づく届出
これらの届出や申請は、会社を設立したり、従業員を雇用したりする際に必要となるものです。これらの届出や申請を行うことで、会社は社会保険や労働保険などの制度を利用することができます。また、これらの届出や申請を行うことで、会社は税金や給与などの計算や納付を正しく行うことができます。さらに、これらの届出や申請を行うことで、会社は個人情報の取り扱いに関する法令や規則を遵守することができます。
これらの届出や申請書類は、各省庁や自治体のホームページからダウンロードできます。それぞれの届出や申請書類には、必要な情報や添付書類を記入し各機関に提出しましょう。ちなみに、これらの届出や申請の場所は以下のようになります。
・社会保険や労働保険の加入届:最寄りの社会保険事務所
・雇用保険の事業所設置届:最寄りのハローワーク
・健康保険や厚生年金保険の事業所番号通知書:最寄りの日本年金機構
・源泉徴収票の発行:本店所在地の管轄税務署
・青色申告承認申請書:本店所在地の管轄税務署
・個人情報保護法に基づく届出:個人情報保護委員会
宅地建物取引士の重要性
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宅地建物取引業免許の申請をするには、宅地建物取引士が最低でも1人いなくてはなりません。(事務所ごとに従業員5人につき1人以上の割合で宅地建物取引士を配置しなければならない)つまり、不動産会社や仲介会社などを創設するには、宅建士証を持っていることが必須条件となります。
ちなみに宅建士証の取得方法は、まず、宅地建物取引士試験に合格する必要があります。この試験は、毎年10月に実施される国家資格試験で、受験資格はありません。しかし、合格率は15%前後と難易度が高く、民法や宅建業法、税法などの法律知識を身につける必要があります。試験に合格したら、合格証明書が送られてきます。
次に、都道府県知事に資格登録する必要があります。この登録は任意ですが、登録しないと宅建士証を手に入れることができません。登録するためには、宅地建物取引業の実務経験が2年以上あるか、あるいは国が実施する登録実務講習を受講する必要があります。また、登録の欠格要件に該当しないことも条件です。
最後に、宅地建物取引士証の交付申請をする必要があります。この申請は、資格登録から1年以内に行わなければなりません。もし1年を超えてしまった場合は、法定講習を受講しなおす必要があります。申請書類を提出したら、宅地建物取引士証が交付されます。
宅地建物取引士証を持っていることで、不動産業界で働く際に重要な独占業務を行うことができます。独占業務とは、重要事項説明や契約書への記名・押印など、不動産取引において法律で定められた宅建士しか行えない業務となります。
不動産保証協会に加入する必要性
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宅地建物取引業免許の申請には、「営業保証金を供託すること(本店1000万円、支店500万円)または不動産保証協会に加入すること」とありますが、よくあるご質問なので詳しく説明します。まず、営業保証金を供託すること(本店1000万円、支店500万円)または不動産保証協会に加入することは、宅地建物取引業法によって宅建業者に義務付けられていることです。これは、不動産取引で損害を受けた相手方に対して、その損害を弁済するための制度です。
営業保証金を供託する場合は、主たる事務所(本店)の最寄りの供託所に金銭や有価証券を預けます。主たる事務所の供託額は1000万円で、その他の事務所(支店)は事務所ごとに500万円です。有価証券の場合は、種類によって評価額が異なります。例えば、国債証券は額面金額の100%、地方債証券や政府保証債証券は額面金額の90%、その他の有価証券は額面金額の80%となります。
不動産保証協会に加入する場合は、営業保証金の代わりに弁済業務保証金分担金というものを納付します。弁済業務保証金分担金は、主たる事務所で60万円で、その他の事務所は事務所ごとに30万円です。この分担金を納付した後、保証協会が代わりに供託所に弁済業務保証金を供託します。
営業保証金を供託した場合も、不動産保証協会に加入した場合も、その旨を免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に届け出なければなりません。届け出をした後でないと、宅建業を開始することができませんのでご注意下さい。
不動産保証協会とは
ちなみに、不動産保証協会とは、不動産業界で働く宅地建物取引業者の団体です。不動産保証協会は、不動産取引において損害を受けた相手方に対して、その損害を弁済するための制度を運営しています。
また、不動産業界の調査研究や研修講習なども行っています。不動産保証協会に加入することで、宅地建物取引業者は営業保証金を供託する必要がなくなります。不動産保証協会には、公益社団法人不動産保証協会と公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会の2つがあります。
不動産会社のサービスについて
不動産会社のサービスには、主に仲介業務、管理業務、売買業務の3つがあります。最後に、それぞれのサービスについて簡単に解説します。どういったサービスで会社を運営していくのか参考程度にご覧ください。
仲介業務について
仲介業務とは、不動産の売主と買主、または賃貸物件のオーナーと入居者をつなげることで、不動産取引を成立させることを目的としたサービスです。 不動産会社は、仲介業務を行うためには宅地建物取引業免許を取得する必要があります。仲介業務には以下のようなものがあります。
売買仲介:
不動産の売却や購入を希望する人に対して、物件の紹介や査定、価格交渉、契約書作成などを行うサービスです。不動産会社は、売買仲介によって成約した物件の価格の一定割合(通常3%+6万円)を仲介手数料として受け取ります。
賃貸仲介:
賃貸物件の入居や退去を希望する人に対して、物件の紹介や条件交渉、契約書作成などを行うサービスです。不動産会社は、賃貸仲介によって成約した物件の家賃の一定割合(通常1ヶ月分)を仲介手数料として受け取ります。
その他:
不動産会社は、仲介業務だけでなく、不動産取引に関する相談やアドバイス、市場調査や分析なども行うことがあります。これらのサービスには別途料金が発生する場合があります。
管理業務について
管理業務とは、不動産オーナーから委託されて、賃貸物件やマンションなどの不動産の運営や維持管理を行うことを目的としたサービスです。不動産会社は、管理業務を行うためには宅地建物取引業免許だけでなく、管理業者登録も必要です。管理業務には以下のようなものがあります。
賃貸管理:
賃貸物件の入居者募集や契約手続き、家賃回収や滞納対応、修繕や清掃などを行うサービスです。不動産会社は、賃貸管理によって得られる家賃収入の一定割合(通常5%~10%)を管理報酬として受け取ります。
分譲マンション管理:
分譲マンションの共用部分や設備などの維持管理や修繕計画などを行うサービスです。不動産会社は、分譲マンション管理によって得られる管理費収入の一定割合(通常10%~20%)を管理報酬として受け取ります。
その他:
不動産会社は、管理業務だけでなく、不動産の価値向上やリノベーションなども行うことがあります。これらのサービスには別途料金が発生する場合があります。
売買業務について
売買業務とは、不動産会社が自らの資金や借入金などを用いて、不動産の売買を行うことを目的としたサービスです。 不動産会社は、売買業務を行うためには宅地建物取引業免許だけでなく、法人登記や消費税登録なども必要です。売買業務には以下のようなものがあります。
不動産仕入れ:
不動産会社が市場やオーナーから不動産を購入することです。不動産会社は、仕入れた不動産をそのまま売却する場合や、改修や分譲、開発などを行ってから売却する場合があります。
不動産販売:
不動産会社が仕入れた不動産を市場や個人に売却することです。不動産会社は、販売する不動産の価格設定や広告宣伝、契約書作成などを行います。
まとめ
不動産会社を開業する際には、これらのことを参考にして計画的に進めてください。不動産会社は生活に直結する仕事なのですごくやりがいがあります。ただ不動産業界は競争が激しい業界です。他社と差別化するためには、自社の強みや特色を見つけてアピールすることが必要です。例えば、特定のエリアや物件に特化したり、独自のサービスやノウハウを提供したりすることが必要となります。大変な事も多いともいますが、これから色々と試行錯誤して素敵な不動産会社を創り上げていきましょう。