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製薬会社が儲かる理由と新薬開発の裏話|日本の臨床試験制度は本当に「安全」なのか

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製薬会社が新薬を開発する際に掛ける費用は約500億。開発年数は大体10年〜20年程掛かると言われている。またこの新薬開発の工程には臨床試験がありますが、ここでも莫大な時間とお金が掛かっている。

 

ただ実は新薬開発は一度中止になると大体の医薬品は2度と世に出ることはなく打ち切りとなります。つまり、開発が中止になると一瞬にしてそれまで掛けてきた時間とお金が水の泡となるのです。

 

では、そんなギャンブルのような製薬事業は本当に稼げるのでしょうか?製薬会社と聞くと、年収が高い、福利厚生が良いイメージですが、本当に会社は儲かっているのか、社員は本当に高給なのでしょうか?

 

 

そこで今回は、製薬会社がどのように新薬を開発して儲けを上げているのかをご紹介したいと思います。それでは、さっそく見て行きましょう。

 

製薬会社社員の平均年収と仕事内容

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製薬会社は主に薬の開発研究と営業を生業としています。そして基本的にどちらも社員の給与は高いです。30代でも年収1000万に届く方がザラにいます。また福利厚生もよく、有休含めて休みは十分に取れ、潤沢な家賃補助も入ってきます。個人見解ですが、サラリーマンとしては比較的幸せに生活できる職だと思います。

 

給料支給例※立場・職種・役職等によって若干異なる。

・20歳〜30歳:年収平均800万前後

・30歳〜40歳:年収平均1000万前後

・40歳以降:平均1200万〜2000万前後

・特殊/研究者:5000万以上+ストックオプション等

 

出張や土日出勤、日々の勉強もある為、決して楽なことばかりではありませんが、無理な残業や終電以降も仕事をするという事はまずありません。つまり、ワーク&ライフバランスが取れたコスパが良い業界といえます。とは言え、そもそも製薬会社はどのように利益を上げているのか、仕事内容や実態はどうなのか?以下、詳しく触れていきましょう。

 

 

新薬の開発に掛かる費用と時間

昨今の治療の約7割以上は薬物治療と言われていますが、医薬品を開発する事は大変です。薬が当たれば官軍、外れれば賊軍の世界です。医薬品・新薬の開発はとにかくギャンブルです。

 

実際、一つの化合物(これって薬になるかな?と考えられる成分)を開発するのに、費用は約500億、大体開発年数は10年〜20年程掛かります。中でも治験に要する費用と時間は莫大です。

 

治験に掛かる費用と時間

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まず、人間に対する治験は3フェーズ実施します。

第一フェーズ:健常な成人に対する試験

第二フェーズ:比較的軽度な患者に対する試験

第三フェーズ:患者に対する試験

 

各フェーズで必要な平均的な期間は以下の通りです。

第一フェーズ:約15か月

第二フェーズ:約15か月

第三フェーズ:約25か月

合計:約55か月

 

これをコストに換算すると以下のようになります。

第一フェーズ:約10億8600万円

第二フェーズ:約21億1000万円

第三フェーズ:約40億1820万円

合計:約72億1420万円

 

なんと巨額な金額と長い期間がかかっているかがお分かり頂けると思います。ですので、製薬会社としては認可が下り新薬が発売が出来るようになった場合、この臨床試験にかかった費用を回収し、かつ利益が出る価格設定をしなければならない訳です。

 

新薬開発はほぼギャンブル

ただ、これだけ巨額な金額と時間を掛けても治験で立証され世に出る確率は「約3万分の1」です。期待の大型新薬。今後の社運は現在臨床開発中のA薬に賭ける。など社内外で盛り上がっていても、臨床開発の途中で思わぬ副作用が出たり、期待していた効果が出ないとなると、開発が途中で中止となります。一度開発が中止となると大体の医薬品は2度と世に出ることはなく、打ち切りとなります。

 

大変賢いプロの研究者達でも予測できない事が多々あり、それぐらい予測通りに試験が運ぶ事は少ないのです。人間の体は、複雑かつ個体差があるので本当に新薬の開発といものは難しいのです。

 

日本の臨床試験が厳しい理由

日本の臨床試験がここまで厳しくなったのは「過去にあった失敗の歴史」があるからですが、日本に比べ「認可が甘い」と言われるアメリカのFDAでは認可を出した後で問題が発覚し、使用条件が追加されたり、認可取り消しとなる例が後を絶ちません。

 

しかし日本の場合、臨床試験を通過した医薬品に後から「使用条件の追加」や「認可取り消し」となる例は現在では全くと言っていいほどありません。

 

それだけ「厳しく」している結果、長期間となり費用も膨大な額になるのですが、「金か安全か」と問われた場合、日本は「安全」を優先している訳で、これはやむを得ないこととも言えます。ですので現在の日本の臨床試験制度は「安全と言う観点から見たら適切なもの」と言えるのです。

 

よって、よく新薬で「アメリカではとっくに認可が下りているのに日本では、まだ使えない」というケースがありますが、安全を最優先にしている日本の臨床試験制度から見るとアメリカの認可基準は「甘すぎる」ので、アメリカでOKが出たからと言って大丈夫とは言えない、というのが日本の医薬品行政に係わる人達の本音なのです。

 

新薬開発の難易度は年々増している

特に昨今の新薬開発は厳しいです。「なぜか?」と申しますと大きく分けて理由は2つ。まず一つ目は、既に良い医薬品がこの世の中に溢れているからです。特に日本人に多い生活病「糖尿病、高血圧、高コレステロール血症」これらの種類の医薬品は豊富であり、何かが効かなければ、別の医薬品を試せる環境にあります。効果に個体差はあるものの、何かの医薬品は大体効く、あとは患者の生活習慣や努力次第で改善できてしまうのです。

 

厚生労働省に「この医薬品は新薬として販売しても良いですよ」と許可を貰うには、すでにある医薬品とは効果効能・安全性などが劇的に異なる医薬品じゃないと認めて貰えません。

 

これが二つ目の理由になるのですが、似た様な医薬品の場合、すでに値下げされている既存薬か、ジェネリック医薬品で代用可能な為、厚生労働省から販売許可が下りません。医療費を抑えたい役人の方々は、新薬なんて高い物にできれば医療費を掛けたくないのです。

 

なぜ製薬会社は儲かるのか

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そうなると、製薬会社は稼げないのか?と思うかもしれませんが、結論から言うと、儲かります。確かに以前より利益を出しにくい環境下ではありますが、それでも製薬会社は儲かります。実際に製薬会社はほぼ9割以上が黒字経営と公表されています。

 

新薬開発の利益率は桁違い

理由は単純で「薬は原価が非常に安い上に、多くの人に毎日確実に一定量消費してもらえる」為です。例を上げると、

 

ある製薬会社の例:1製剤(原価:約0.5円)

1錠あたり約250円→1日2回投与=1患者さんあたり約500円/1日

(生活習慣病なので永続投与)

 

患者数例:大病院で100名/その他開業医で300名

500円×400名=20万円/1日(20万×30日(一ヶ月)=600万)

(これは県単位ではなく、エリア(●県の北部など)単位です)

 

上記はたったの1製剤のみの計算例です。薬が合わないと言われ、他社の製品に切り替えられる事もありますが、基本的には一度処方された薬剤は数年は変わらず投与が継続される為、このように安定的に収益が確保できるのです。

 

また、担当製品の数、エリアも全国となると桁が変わる事が容易に想像できるかと思います。ちなみに、医薬品の中でもメガヒット製品は、1000億円以上を1年で稼ぐと言われています。

 

このように、新薬開発はたしかに大変ですが、一度当たれば少なくともジェネリック医薬品が出るまでの10年間は、安定的に利益を出し続けられます。※10年経つと、すぐにジェネリックに変わってしまう為、一度当てたらずっと安定の地位にいられる訳ではないですが、リターンが桁違いとなっています。

 

製薬会社で働く社員は以外にも将来が不安

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では、ここからはそんな製薬会社で働く社員について少し触れていきたいと思います。上記でも述べましたが、製薬会社はほぼ9割以上が黒字経営で、社員の年収は約1000万前後が約束されています。ですが、以外にも製薬会社の社員は将来に不安を感じています。

 

特に、医薬品営業にあたる「MR」と言う職種の方達は不安を抱えやすいです。MRは体力的には非常に楽ですが、現在はコンプライアンス規制によりできる営業も限られてしまったので、競合他社との差別化にみんな苦労しています。そんな事務的な営業が嫌になり、存在意義や将来に不安を感じている営業も多いのです。実際にMRは毎年恒例の行事のように、どこかの企業は早期退職を募りますし、国も会社もMRの削減を掲げています。

 

不安を抱えているのはMRだけではありません。創薬の研究をしている研究者の方々も不安を感じている方が多いです。これはどの業界でも同じですが、実は研究者は40歳以降になると転職先がめっきり減り始めます。そんな状況下で、研究の開発拠点が国内から海外へ移転なんて事もあり、「海外行くか・辞めるか」の2択を突然つきつけられることもよくある話です。また、歳を取り成果が上げられず業務範囲が狭くなっていき、居場所を無くし自主退職に追い込まれる研究者も多いです。

 

これらの事から、製薬会社で社員として生き残るのは大変だとされています。その為、早々に他業界に移る方も結構増えているのです。ただ、製薬会社は専門スキルや営業力に対して過剰に高い給与を支給されている為、他業界に転職した後、金銭的に苦労する方が多いと言われています。

 

 

まとめ

製薬会社で活躍されている方の多くは、勉強や自己研鑽を大切にされており、海外でMBA取ったり、語学習得に勤めたり、様々な資格を取るなど、努力されている方ばかりです。医療と健康は人類の永遠のテーマであり、それを支えるのは間違いなく製薬会社の社員です。

 

今回の記事で製薬会社についてどう思われたかはわかりませんが、日本の製薬会社の事を少しでも理解して頂けたのなら幸いです。今後も彼らが安心して働け、日本から世界中の患者さんへ革新的な医薬品を届けられることを願っています。